世界を魅了する「Anime」の制作現場を支えるAvid Media Composer
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更新日:5 日前
改めて言うまでもなく、アニメは日本を代表するコンテンツの一つである。本来英語の「Animation」の略語としての日本語だった「アニメ」という言葉は、海外で逆輸入され、日本のアニメおよびそのスタイルに影響を受けたアニメ作品を指す『Anime』として認識されている。(インタビュアー 西岡 崇行)
ポイント
フィルムからデータへ。Avid Media Composerとの出会いとノンリニア黎明期の経験
アニメ編集でMedia Composerが支持される理由 ― アニメ特有のニーズを満たす機能の紹介
メディア共有サーバーAvid NEXISを使うメリット
ノンリニア黎明期の経験
東京都調布市にある有限会社 岡安プロモーションは、そんなアニメ制作における編集を数多く手掛ける編集会社である。1954年(昭和29年)に創立された老舗であるが、ノンリニア編集機としてのMedia Composerへの取り組みも早かった。
「1993年、岩井俊二監督が映画を作るにあたりMedia Composerを使用したいとの要望がありAvid Technology(以下Avid)からMedia Composer を借りて、短編映画『Undo(1994)』、続けて長編映画『Love Letter(1995)』を編集しました。」(有限会社 岡安プロモーション 代表取締役社長 小島俊彦 氏 以下、すべて小島氏)
まだ黎明期で、ノウハウも少なかった当時ならではの苦労話もある。
「Media Composerに取り込むにはβカムのビデオデッキが不可欠であるため、Avidのショールームにハードディスクを持ち込んでデジタイズしたことがありました。
しかし迂闊にもプロジェクトファイルを持ち帰ることを忘れてしまいました。月曜のラッシュには間に合わせなればいけないので、土曜日の朝イチで Avidに行けばなんとかなるかもと思い、ショールームに行ったのですが、土曜日なのでオフィスには誰もおらず…。
しかしドアが空いていて、ビルの清掃員の人が掃除をしていました。その方に断りを入れてすぐにフロッピーディスク(その当時はフロッピーでした)にコピーして持ち帰り、事なきを得ました。後で Avid の方に平謝りでした。」
その後、実機が岡安プロモーションに導入されると、TVアニメーション作品『頭文字D(イニシャルD)(1998)』を皮切りに、様々な作品を作り出していく。
「『頭文字D』は、車はCG、アニメ部分はセル・フィルムが混在する作品で、Media Composer以外ではできない、Media Composer しか選択肢がない状況でした。当初CG部分はMOディスクで持ち込まれ、フィルムはテレシネしてVHSにコピーしたのものをデジタイズし、MediaComposer上で合わせました。」
アニメ編集はMedia Composer
これをきっかけに、日本では『アニメ編集はMedia Composer』という図式が出来上がっていくことになる。
「そもそもアニメ制作は 24p(23.976p)のプロジェクトを作って始めます。しかし、テレビ放送は当然 30 DF (59.94i DF) です。Media Composer だと、24p プロジェクトの中で 30 DF の TC が同時に表示できる。これができるシステムはなかなかないんです。これだけでも『アニメはMedia Composer』と言える気がします」
アニメ制作特有のニーズを満たす Media Composer の機能も数多くある。
「アニメの編集では入れ替え作業が多く、実質的には入れ替えが作業の半分以上を占めると思いますが、入れ替えと言ったら、青の Replace です。また、駒止•フリーズフレームは実に多用します。口パク修正で閉じた口をフリーズして移植することは日常茶飯事です。Media Composerは、このフリーズフレームがソース側で作れるのがいい。作業効率が格段に上がります。」
口パク修正については、更に細かい作業も行う。
「どうしても修正しきれないときは、セリフのコマ出し(当該のセリフが実際に話されているフレームを特定すること。スポッティング)をして、再撮影してもらうこともあります。この時助かるのが AuxTC(タイムライン上のTCやソースのTCとは別に、様々な目的で任意に付加できる補助 TC) の存在です。
各カット頭を00:00:00:01スタートとしタイムラインの全カットに表示できるのがとても大きい。これがないと、カット頭からセリフ頭にインアウトを打って記入、次にセリフ尻にアウト点を打って記入、次のセリフ頭を探して記入…となり、これは手間も増えミスも起こりやすくなります。」
スポッティング作業には、Media Composerの文字起こし機能も有効活用されている。
「数年前までは有料webサービスを使って文字起こしをしていましたが、Media Composer単体でできるようになったのは助かります。文字起こしデータをエクスポートし、データベースアプリで EDL と紐付けると各カット単位でのスポッテイング表が出来上がります。
ストリップサイレンス(収録された音声から無音部分を自動的に検出し、削除する機能)で無音を切り取った範囲で文字起こしができるようになると、スポッテイング作業が軽減どころか無くなるのではないかとさえ思っています。この機能は現在Media Composer | Ultimateだけの機能ですが、通常版でも使えるようにしてほしいですね。」
バージョン違いにも問題なく対応できる点も評価している。
「別の場所にあるMedia Composerシステムにプロジェクトを持ち出すとき、それがWindowsかMacか、バージョンはいくつか、ということを全く気にしないでいい。Media ComposerならWindowsでも Macでも、相手側のバージョンが低くても問題なく開ける。本当に助かります。」
メディア共有サーバーAvid NEXISの重要性
現在、岡安プロモーションでは 7台のMedia Composerが Avid NEXISに接続され、プロジェクトとメディアを共有している。ノートPCもサポートや出向用として使用していて、それも含めると15台までは接続できる。
「同じプロジェクトに複数人で対応できるのが大きいです。長編映画だとロールごとに分けて同時に作業を勧めたりしています。」
NEXIS導入の決め手になったのは、フォトロンの営業だった。
「それまでも、いつもマメに顔を出してくださっていましたが、劇場用作品を作るタイミングでサーバーを検討したとき、顔を出してくださったのはフォトロンの営業さんだけでした。」
長編制作時はもちろん、通常の制作作業時にも効果を発揮する。
「先程のスポッティングの作業も、本編を編集しながら同時に隣でアシスタントがスポッティング作業を進めることができるので、とても効率が上がります。また弊社ではお客様が入る部屋と我々が準備する部屋が別のため、作業卓が変わることがよくあります。NEXISですと、その時に気軽にサーバーにアクセスできるのも良いです。」
他社サーバーと比較したとき、NEXISではパーティションの容量が状況に合わせていつでも自由に変更できる点も気に入っている。
「プロジェクトの容量が確保できれば、息の長い作品での回想シーンも対応しやすくなります」
Media Composerがアニメ編集に果たす役割
現在のシステムは、この形で運用し始めて9年になる。
「アニメ制作はTV用も劇場用も配信用も、最終フォーマットがそれぞれ異なるくらいで、制作工程にそれほど大きな違いはないんです。なので、今のこのシステムでほぼすべての作業がこなせます。『Media Composer単体でバックグラウンドでのファイル書き出しができたらいいな』とか、小さな要望はありますが、大きな不足はないですし、満足しています。」
アニメ制作へのニーズが高まる中で、フォトロンと Avidにかける期待も大きい。
「アニメが世界を席巻する中でアニメ編集の果たす役割は大きいものとなってきています。アニメ業界では9割は Media Composerを使用していますので、フォトロンには大きくバックアップしていただけたらと思います。」
小島氏が手掛けた最新作は『ペリリュー −楽園のゲルニカ−』が 2025年12月5日公開予定、岡安プロモーションとしては『映画クレヨンしんちゃん 超華麗!灼熱のカスカベダンサーズ』が同8月8日に公開、『トリツカレ男』が同11月7日に公開予定となる。
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